本来なら、防鳥ネットはほぼ100%の忌避効果を発揮します。ところが不慣れな業者が施工すると「施工したネットの中にスズメが入っている!」「鳩がネットの上を巣を作っている!」「どこから侵入してるか探したけど、これといった隙間が見あたらない」といった事例が発生しています。一体、なにが原因だったのでしょうか?
鳥の身体は意外と小さい!
まず知っておいて頂きたいことは、鳥は体毛で大きく見えるだけで、身体自体の大きさは見た目よりもかなり小さいということ。鳥の巣箱の孔をみて“こんなに小さな孔で出入りできるの?”と思った経験はありませんか。実際、巣箱で適正とされている孔の直径は、例えばヒガラで27㎜、スズメ用なら30㎜ほど!体長が約14㎝のスズメが、こんな小さな孔でも出入りできるのです。
今回の防鳥ネットの内側に鳥が入ったというケースは、どこかしらに出入り可能なすき間があるということ。防鳥ネットが鳥害対策のなかで最も難しいといわれる要素のひとつが、このすき間を無くす対応と言えます。
すき間の要因①:ネットの目合いが間違っている
防鳥ネットは、マス目のサイズごとにラインナップされ、鳥の大きさによって使い分けられています。鳥の種類ごとに侵入できないマス目のネットを使用することが必須です。
先述のように巣箱の孔は30㎜が適正とされているスズメは、瓦の下や屋根の軒下など25㎜ ほどの隙間があれば簡単に出入りできます。従って、スズメやセキレイなどは20㎜角のネットを使用します。鳩は25㎜~30㎜角が標準です。
これだけならさほどミスが出ないように思えますが、その判断が難しいのはスズメも鳩も来る可能性があるケース。実際の事例ですが、「鳩よけに30㎜角のネットを設置したが、今度はスズメが入ってきて困っている」と当社に連絡があり現場調査を行うと、元々周辺にはスズメが多数生息していることが判明。そんなスズメが来そうな場所に鳩用サイズのネットでは、侵入されるのは当然です。30㎜を選んだ要因として現場調査の不備、もしくはコスト的な背景があったかと推測されますが、スズメが来る可能性がある環境では最初から20㎜角のネットを使うことがベターです。
すき間の要因②:額縁ワイヤーのテンションが緩い
ネットの目合いが適正でも、施工の段階ですき間ができてしまったら意味がありません。“鳥の侵入防止ネット”のはずが、逆に鳥にとって身を守る“外敵から身を守る安全ネット”になってしまいます。
このようなミスの代表的なものが額縁用ワイヤーのテンションの緩さです。
額縁ワイヤーはネットを張ることで引っ張られて、壁とのすき間が生じます。この時ワイヤーがしっかり張られていないと、すぐに数センチのすき間ができます。この空いたすき間からスズメや鳩が自由に出入りするのです。
特に一辺が長くなる場合はワイヤーにテンションを掛けるのが人力では困難です。そこで〈ターンバックル〉などを用いることで十分なテンションを掛けるなどの対応が必須です。
一度張ったワイヤーを手直しするのは非常に大変な作業なだけに、最初から確実なワイヤー張りを施しておきたいですね。
すき間の要因③:支持金物の選択が間違い
適切な目合い、適度なテンションでワイヤーを張っているのに、それでも鳥が入るケースがあります。その侵入経路を探してもなかなか見つからず、取りあえず目に入るすき間を埋めてみたものの、解決せずに困り果ててしまう。決して少なくないケースです。
この様な事例の多くは、額縁ワイヤーの取付けに使用したコーナー用金物の選択ミスが原因です。支持金具のひとつ〈アイボルト〉は頭部が大きいため《編込み工法》などで重宝するのですが、その大きさから、イラストのようにそのままでは四隅にどうしても隙間ができます。
一方、〈ワイヤー専用ボルト〉のような頭部の小さい支持金物なら、そのすき間を小さく施工することが可能で、このケースの施工ミスは無くなります。
もちろんアイボルトの場合でも、出来たすき間を余ったネットでふさぐなどすれば問題はないのですが、“これくらいのすき間なら心配ないだろう”という誤った判断が後々大きなトラブルに繋がるため、気を付けなければなりません。
一度侵入した鳥を追い出すことは非常に大変な作業です。そうならないためにも、実態の把握や業者選定は充分ご検討されることをおすすめします。
鳥害対策工法のなかでも、防鳥ネット施工は事前の綿密な現場調査はもとより
経験に基づいた精度の高い施工技術が要求されます。
風雨に晒される屋外での施工提案や排気熱の出る箇所への対策など、
施工箇所の状況によって千差万別、対策プランも大きく異なります。
ネット施工に関しては継続して取りあげていきますので、このシリーズを是非お役立てください。