カモメは世界中に分布している鳥で、確認されているだけでも54種、
日本で見ることができるカモメは25種類が記録されています。
今回は日本で見られる主なカモメ8種類を、大型カモメ・中型カモメ・小型カモメ
3つのグループに分けてご紹介します。
目次
日本で普通に見られるカモメ類は、「カモメ基本8種」と呼ばれる、シロカモメ、ワシカモメ、オオセグロカモメ、セグロカモメ、ウミネコ、カモメ、ユリカモメ、ミツユビカモメ、が挙げられます。
さらに、大型(60cm前後)・中型(45cm前後)・小型(40cm前後)とサイズで次の様にグループ分けができます。
大型カモメ:「セグロカモメ」「オオセグロカモメ」「ワシカモメ」「シロカモメ」
中型カモメ:「カモメ」「ウミネコ」
小型カモメ:「ユリカモメ」「ミツユビカモメ」
それでは、これらの種類ごとに生態や特徴をご紹介していきましょう。
◎大型カモメ(60cm前後)
《セグロカモメ》
セグロカモメの特徴
・生息地:ユーラシア大陸の中部から北部、北アメリカ大陸北部などで分布・繁殖、冬には亜寒帯から温帯へ渡っていって越冬する。
日本では冬鳥として渡来し、全国の海岸、河口、港湾などに生息し、冬期は西日本で多く見られ、北日本での個体数は少ない。
岩礁地帯よりも、砂浜や干潟で見られる割合が高い。
・全長:52~64cm
・翼開長:115~145cm
・鳴き声:「クアークアークアクアクア」
・見分け方:オオセグロカモメよりスリムで翼が長め。足はピンク色。
くちばしは黄色で下くちばしに赤斑がある。瞳は黄色で、赤いアイリングがある。
・羽根色:背中が明るい灰色で、濃さはユリカモメとウミネコの中間。頭部、首、腹、尾は白い。
セグロカモメについて
チドリ目カモメ科。漢字表記は《背黒鴎》。
オオセグロカモメと並んで日本で最も普通に見られる大型カモメです。
背の灰色が淡い点はカモメに似ていますが、大きさの違い、足のピンク色で見分けることができます。
《オオセグロカモメ》
オオセグロカモメの特徴
・生息地:極東ロシアのベーリング海とオホーツク海の沿岸、サハリンの沿岸、日本北部で繁殖し、冬は朝鮮半島および中国南部沿岸まで南下する。
日本では、北海道と東北の一部の範囲で繁殖しており一年中見られる(留鳥)が、他は冬鳥として越冬のため飛来する。西日本では少ない。
・全長:61~66cm
・翼開長:132~156cm
・鳴き声:「クォークォークォー」
・見分け方:セグロカモメよりずんぐりした体型。くちばしが頭に対して幾分下向きについている。くちばしは太くて長く、黄色で下くちばしに赤斑がある。足の色は濃いピンク色。瞳は淡色で、ピンクのアイリングがある。
・羽根色:背の灰色はセグロカモメより明らかに濃い目。
頭や腹、尾羽は白い羽毛で被われるが(夏羽)、冬季は頭部から胸に淡褐色の斑点が入る(冬羽)。
オオセグロカモメについて
チドリ目カモメ科カモメ属。漢字表記は《大背黒鴎》。
名前はセグロカモメより大型である事に由来します。
日本国内で繁殖する唯一の大型カモメ類です。
北海道、東北地方の離島や岩礁などで群れをつくり、海辺の断崖や建物上で営巣します。
背の黒灰色がウミネコやセグロカモメより濃いことで識別できます。
《ワシカモメ》
ワシカモメの特徴
・生息地:シベリア東部、カムチャツカ半島からアリューシャン列島、アラスカ西海岸の沿岸部や島々で繁殖。冬は繁殖地付近に留まるものと南下するものに分かれる。
日本では冬鳥として主に本州中部以北に飛来し、海岸や漁港で越冬する。北日本で多い。
・全長:60~66cm
・翼開長:137~150cm
・鳴き声:「クォークォー」オオセグロカモメと似た声。
・見分け方:翼が短くずんぐりとした体型。他のカモメ類と比べると下のくちばしが太くがっしりしている。黄色で先端がややふくらんでおり赤い斑がある。
足は濃いピンク。ピンク~赤紫のアイリングがある。
・羽根色:背と翼の上面が灰色、頭部から胸にかけては白色。初列風切(翼の外側の羽)が灰色に白斑。
ワシカモメについて
チドリ目カモメ科。漢字表記は《鷲鴎》。
平坦な砂浜や干潟よりも起伏のある岩場の海岸線を好む傾向があります。
他のカモメと比べて下くちばしのふくらみが大きく、赤い斑があるのが特徴です。
背の灰色はセグロカモメと同程度ですが、「初列風切」と呼ばれる翼の外側の羽が灰色なのが目印となります。
《シロカモメ》
シロカモメの特徴
・生息地:ユーラシアと北米の北極圏の沿岸部や島々で広く繁殖する。冬は北米大陸のカナダ沿岸からアリューシャン列島、千島列島、オホーツク海沿岸、シベリア沿海州の北部に南下し、越冬する。
日本では冬鳥として九州以北に広く渡来し、海岸や漁港で越冬するが、北日本に多く東京湾以西では数が少ない。
遠浅の海岸を好み、沖合、沿岸、内湾、港、河口などに飛来する。
・全長:62~71cm
・翼開長:140~160cm
・鳴き声:「クア、カ、カ、カ、カ」「ミャオー」「クワー」
・見分け方:セグロカモメより大きくがっしりとした体型。頭が前後に長く瞳が小さい。くちばしは長くて大きく、黄色で下くちばしに赤斑がある。瞳の色は淡黄色で、足はピンク色。
・羽根色:背の灰色はセグロカモメより淡い。初列風切に暗色の模様がなく白いのがワシカモメと大きく違う。尾も白い。
シロカモメについて
チドリ目カモメ科。漢字表記は《白鴎》。
日本でみられるカモメ類の中でいちばん大きいカモメの仲間です。背の灰色は最も淡く、風切が白いので全体が白く見えるのが特徴です。体が大きく他のカモメ類より白いので、よく目立ちます。
◎中型カモメ( 45cm前後)
《カモメ》
カモメの特徴
・生息地:ユーラシア大陸北部や北アメリカ大陸の西部および北部などに幅広く生息、冬季にはヨーロッパやアフリカ北部、ペルシャ湾岸、北アメリカ西海岸、東南アジアなどに南下して越冬する。
日本には、冬鳥として越冬のため全国に飛来し、春夏には繁殖のため再び日本を離れる。
・全長:40~52cm
・翼開長:105~135cm
・鳴き声:「キュッキュッ、キュー」「クゥークゥー」
・見分け方:頭から胴体、尾は白く、背と翼の上面が灰色、くちばしと足は黄色、初列風切(翼の外側の羽)の色が黒く先端に白い斑紋が入る。
カモメについて
チドリ目カモメ科カモメ属。漢字表記は《鴎》。
日本でもお馴染みの海鳥ですが、世界的に見ても数が多く、北半球のかなり広い地域で見る事ができます。
カモメは海岸などでは水中に住む魚や甲殻類が水面に浮いてきたものをくちばしくちばしですくい上げて捕食して生活しており、数羽から数十羽の群れを作ります。
この群れは同じ種類のカモメだけでなく、他のカモメの仲間と行動を共にしている事も珍しくありません。
《ウミネコ》
ウミネコの特徴
・生息地:サハリン、千島列島、中国大陸東部、台湾、朝鮮半島などに分布し、世界的には限られた分布。日本では北海道、本州、九州、伊豆諸島の沿岸に通年棲息する留鳥。北海道や本州北部にいる個体は冬季になると南下するものもいる。
沿岸の半島や島で繁殖し、繁殖期以外は河口、干潟、港などで大きな群れとなり生息する。
・全長:44~52cm
・翼開長:105~128cm
・鳴き声:「ミャーッ ミャーッ」「ミャーオ」または「アーオ」
・見分け方:カモメと似た大きさと体色、背部と翼表面の灰褐色がカモメより濃く、尾羽に黒い帯模様が入る。黄色いくちばしの先端に黒帯と赤班がある。足の色は鮮やかな黄色。淡い黄色で赤いアイリングがある。
ウミネコについて
チドリ目カモメ科カモメ属。漢字表記は《海猫》。
日本では留鳥で、日本各地の沿岸部や河口で一年中見る事ができるカモメの代表種です。
渡り鳥が北に帰っている夏の間に見かけるカモメ類はほとんどがウミネコです。
日本近海の島々や岩礁などに集って繁殖し、沿岸部の岩礁や草原などに木の枝や枯草、海藻などを組み合わせた皿状の巣を作り、日本では4~5月に1回に2~3個の卵を産みます。
「ミャーミャー」という鳴き声が猫に似ていることからこの名前が付きました。
◎小型カモメ( 40cm前後)
《ユリカモメ》
ユリカモメの特徴
・生息地:ユーラシア大陸の極東ロシアから西ヨーロッパまで広く繁殖し、北アメリカの東端でも一部繁殖し、冬は南下しヨーロッパ、アフリカ、インド、東南アジアへ渡り越冬する。
日本では冬鳥として本州から南西諸島まで広く渡来し、北海道でも厳冬期以外では確認することができる。夏に繁殖するため、日本では基本的に営巣しない。
主に、全国の海岸の他、河川や沼地などに普通に渡来する。海岸、内陸の湖沼や河川に比較的大規模な群を作り生活する。
・全長:34~41cm
・翼開長:92~110cm
・鳴き声:「ギャーッ」「ギューイ」
・見分け方:カラスより小さめで細く、くちばしと足が赤い。
・羽根色:足とくちばしが濃い赤色。胴体部分が白、背と翼が淡い灰色。
冬羽は頭部が白く、目の後ろに黒い斑点があるのが特徴。夏羽は頭部が黒褐色になる。
ユリカモメについて
チドリ目カモメ科カモメ属。漢字表記は《百合鴎》。
日本にいる小型のカモメ類の大半はユリカモメ。冬鳥として本州から九州にかけての地域で見られます。
赤くて細いくちばしが特徴的で、足も赤い色をしています。
夏羽と冬羽とで頭部の色が全く異なり、夏羽の個体は頭部が頭巾をかぶったような黒に近い濃褐色になります。しかし、ユリカモメは冬になると日本に渡ってくる冬鳥である為、残念ながら夏羽の姿を国内で見る事は基本的にはありません。
カモメ類では最も内陸にまで飛来する鳥で、昼間は海岸から数10キロ以上も入った川岸の街や農村近くにやって来て、餌場で人のゴミをあさることも。
しかし夜間は再び海上や湖に戻り、沖合のいかだなどをねぐらにします。
《ミツユビカモメ》
ミツユビカモメの特徴
・生息地:ユーラシア大陸の中部から北部、北アメリカ大陸北部やグリーンランドの海岸部で繁殖し、冬季になると北大西洋や北太平洋、北極海の亜寒帯から温帯へ渡っていって越冬する。
日本では、越冬のため九州以北に冬鳥として飛来する。 北海道では夏でも見られる。
・全長:38~40cm
・翼開長:91~97cm
・鳴き声:「キッ クエー キッ クエー」
・見分け方:ユリカモメよりやや大きいが、足が短いため背が低く見える。胴体部分が白く、背と翼はユリカモメより濃い目の灰色。くちばしは緑みがある黄色、足は黒くて短い。飛翔時の翼の先端の黒い部分が三角形に見える。
ミツユビカモメの生態
チドリ目カモメ科ミツユビカモメ属。漢字表記《三趾鴎》。
外洋性のカモメで、主に外洋に面した海辺、沿岸に大きな群れで見られます。内湾には滅多に入ってきませんが、海が荒れた時などに、漁港や河口などに群れで避難してくることもあるんだそう。足は黒くて短いこと、飛翔時に翼の先端が三角形に黒いのが特徴です。
いかがでしたか?ひとくちに「カモメ」といってもこんなに様々な種類がいるのですね!
カモメ類はどの種もよく似ている上に、夏羽と冬羽で色合いが違い、成鳥になるまで年齢によっても羽色が換わるため、識別も難しく、バードウオッチャーの間でも「カモメの観察は難しく奥が深い」と言われるんだそう。
今回は日本の主なカモメを8種類ご紹介しました。
他のカモメについての記事、『カモメとウミネコの違いは?鳴き声や見分け方を知りたい!』
もぜひご覧ください。
参考文献・資料:
『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)カモメ亜科』
『決定版 日本のカモメ 識別図鑑/氏原巨雄・氏原道昭 著』
カモメ類は同じ種でも、若鳥から成鳥に成長する過程で
羽色が変わり、識別が難しい鳥です。
若鳥でなく成鳥を基本に観察し、まず大きさで大別して
そこからくちばしや足の色、羽根色などの特徴をとらえると
識別しやすいでしょう。