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鳥害対策 主要6種の基本と防鳥法 ハト/カラス/カモメ/ムクドリ/スズメ/ツバメ

鳥害対策 主要6種の基本と防鳥法 ハト/カラス/カモメ/ムクドリ/スズメ/ツバメ

ひと言に鳥害対策といっても、鳥の種類や状況によりその対策方法は様々。
また生態や習性を知ることで、発生理由と対策法がわかるようになります。
今回はハト、カラス、ウミネコ(カモメ)、スズメ、ムクドリ、ツバメと
代表的な6種の鳥別にその基本をまとめました。

《ハトの鳥害対策》

鳥害対策防鳥対策カラス

平和の象徴でありながら、鳥害の代名詞的存在にもなってしまったハト。
日本にいる13種類のハトのなかでも、人の生活圏に溶け込み被害を発生させているドバト(カワラバト)について説明して参ります。

◎ハトの形態・繁殖・寿命

・対象:ドバト〈塔鳩・堂鳩・土鳩〉
・属性:ハト目ハト科カワラバト属
・体長:約33cm
・体重:約300g
・鳴き声:クックー、ポッポー、グルックー
・繁殖期:夏を除く通年で、特に春から初夏が活発。1回に2個の卵を産み14~21日で孵化。
その後約40日で巣立つ。生後6カ月で発情し繁殖をはじめる。
繁殖は通常年2~3回ですが、餌や環境により7~8回も繁殖をしたケースも。
・寿命:約10年。飼育環境では20年以上生きるハトも。

◎ハトの性格と習性

気圧や磁気を感知する体内センサーや、嗅覚、記憶力、視覚処理力など、多くの能力をもった優れた鳥類です。
雑食で、人への警戒心も低いことから都市部で人と共生するようになりましたが、決まった行動パターン、テリトリー意識、強い帰巣本能といった習性が、鳥害が発生する要因になっています。

1日に体重の1/10程度、約30gの食事をするドバトは、その糞も膨大です。
スズメやカラスなどと違い自分のねぐらや巣の中でも糞をするため、営巣場所には大量の糞が堆積します。
糞自体の衛生面や悪臭、虫、乾燥糞の飛沫による感染症などはもちろん、鳴き声や、姿そのものを見ることへの嫌悪感など、その被害も様々です。

◎主な被害と鳥害対策

ハトによる鳥害はビル、マンション、商業施設、倉庫、駐車場、競技場、駅舎、市場、橋脚、寺社など至るところで発生します。
そのなかでももっとも件数が多いのがマンションのベランダ。
その理由として、元来ハトは外敵から身を守るために、崖にあいたすき間を好んでねぐらや巣にしてきましたが、それに似た環境がマンションのベランダといえるのです。
同じベランダの鳥害でも『鳴き声がうるさい』、『手すりが糞で汚される』といった比較的軽度のものから『夜に帰ってきて糞をする』や『巣をつくって卵を産んでる』といった重度の被害など状況はさまざま。
この被害の進行度合いによって、鳥害対策の考え方と方法は変わるので、事前に進行具合はどの程度なのかを把握し、適切なプランを取るようにしましょう。

今回、全ての施設別の解説は違う機会としますが、進行度合いとその防鳥メソッドは基本的には共通します。
それではベランダを一例に被害状況とおすすめの対策法をご紹介していきます。

 

初期段階

ハトがベランダの手すりに止まるようになった⇒【羽やすめ】
ベランダ内部まで侵入せず、手すりに止まっているだけなら、恐らくそのハトは【羽やすめ】としてそのベランダを使っているだけです。
まだハトはそのベランダを完全に信用はしていません。
そのため“ここの手すりに止まり難い”、“なんか異物があって怖い”と思わせるような対策で対応します。

《対策法》手すりに止まらせないようにワイヤーを張る。もしくは市販のCDや目玉などのハト除けグッズで脅すことで来なくなる可能性があります。

中期段階

頻繁に手すりに止まっている。複数で来るようになった⇒【お気に入りの場所】
ハトの行動パターンを決めるのが好きな鳥です。
何度かそのベランダで【羽やすめ】をするなかで、『ここは見晴らしがよく、居心地がよくて、ベランダの中も安全そう』と認識すると、ハトにとって【お気に入りの場所】として昇格します。
するとハトが一日何度も足を運ぶようになり、仲間も誘い、結果として糞や騒音の被害が増えます。
そこでハトに“居心地の悪い場所”と思わせる対策が必要ですが、一度気に入った場所だけにそれなりの邪魔をしないとなりません。

《対策法》市販のグッズなどは既に手遅れかもしれません。
まだベランダ内部に降りてきてないなら、防鳥ワイヤーか剣山タイプで手すりに止まらせない対策がよいでしょう。
もしベランダ内にハトが隠れられそうなすき間や植木鉢などがあれば要注意。
例えば室外機の下を塞いだり、植木鉢を撤去するなどして、次の段階に行かないようにしてください。

後期段階

ベランダに住み始めた⇒【ねぐら】
それまで日中しか来なかったハトが、日が暮れるとベランダに来て朝までいるようになります。
これは【お気に入りの場所】から、【ねぐら】になった証拠。
上で述べたようにエアコンの室外機の下や、植木鉢などハトが身を隠せるものがあるはずです。
人の出入りがないベランダなどは、なにもモノが無くてもねぐらにしてしまいます。

こうなるとその場所はハトにとっての我が家。
執着心が高まり、行動も大胆になります。
それまで一度手すりに止まって内部の安全確認をしていたのが、直接ベランダ内部に入るようになるため、手すりにワイヤーや剣山を設置してもあまり意味がありません。
ねぐらとして機能しないような対策、または物理的にベランダ内部への侵入を防ぐ必要があります。

《対策法》ハトが身を隠せるようなものを完全に撤去し、室外機のすき間など確実に塞いでください。
また糞などはきれいに掃除し、頻繁にチェックして、いたら追い払います。
それでも解決しない場合は、目合いが30㎜以下の防鳥ネットを張ることになります。

他にはゲル状の忌避剤もベランダでは設置しやすく、一定の効果はあるされます。
ただ油分を含む忌避剤を身体中につけたハトがあちこち移動します。
そのため壁や手すり、室外機、床など、どうしても周囲が汚れてしまいます。
場合によっては近隣のベランダや建物を汚すことにもなるので注意が必要です。

末期段階

ベランダで営巣しはじめた⇒【営巣・繁殖場所】
【ねぐら】として気に入り、“ここで産卵しても大丈夫!”と思われてしまった段階です。
ハトの繁殖期は通年のため【ねぐら】から【営巣・繁殖場所】になるのは季節を問いません。
こうなると帰巣本能はさらに強まり、少しのすき間さえあれば身体をねじ込んででも巣に帰ろうとします。
抱卵中はさらに帰巣本能は強まるのはいうまでもありません。
またそこから巣立った子供たちもそこを故郷として帰巣本能を発揮します。

空き部屋や、普段ベランダに出ないと気づくのが遅れ、発覚した時には既にハトが産卵していて、ベランダは糞で溢れている、というケースが多いようです。

《対策法》対策法は30㎜以下の防鳥ネット一択になります。
それもすき間なく、確実に設置する必要があります。
よく前面にだけ張っているベランダを見かけますが、この段階ではまったく意味がなく、側面や仕切り板の上下、手すり下部の小さなすき間などから侵入できます。
むしろ前面の防鳥ネットがカラスなどの外敵から身を守るガードになり、逆に快適度を増すことになるのです。
営巣した鳩の帰巣本能はすさまじいものがあります。
わずかなすき間に身体を無理やりねじ込み、身動きできなくなり、そのまま死んでしまうケースもあるほどです。

 

 

◎カラスの鳥害対策

鳥害対策防鳥対策カラス

日本には7種のカラスが生息しています。
野山や郊外に多いハシボソガラスは農村部で害鳥として扱われるケースもありますが、都市部では主にハシブトガラスが鳥害対策の主役となっています。

◎カラスの形態・繁殖・寿命

・対象:ハシブトガラス〈嘴太烏〉
・属性:カラス目カラス科カラス属
・体長:約56cm
・体重:約500~900g
・鳴き声:カァーカァー
・繁殖期:4月~7月。年1回の繁殖で合計2~5個の卵を産み約20日で孵化。その後30~40日で巣立つ。
・寿命:約10~15年。飼育環境では20~30年が平均寿命。

◎カラスの性格と習性

ハシブトガラスは元々は森のなかで生活するカラスでした。
それが、餌の豊富な人の生活圏に適応するようになると個体数も増加し、カラスの代名詞的な存在になりました。

ご存知のとおり非常に頭のよい鳥です。
その認識力、記憶力、応用力、情報伝達力といった知能に加え、餌を保存する貯食行動、非常に高い飛翔性能、小動物を仕留める攻撃力、仲間との協調性、幅広い雑食性といった特性など、鳥として非常に高いレベルに位置づけされる優れた鳥でもあります。
ハトと違って人への警戒心が強い版面、大胆な行動をとることも、その高い知能と運動能力で完全に都市部での生活に適応する術を手に入れました。
当然のことですが、人に害を及ぼすのは人の生活圏に近い存在の鳥です。
カラスによる被害も様々なケースが発生しています。

◎主な被害と鳥害対策

【繁殖期における威嚇行動】
営巣期間中のカラスは夫婦一体となって子育てをします。メスが巣を守る間にオスが周囲を警戒し、不用意に近づく外敵を威嚇・攻撃するのです。
先に鳴き声やクチバシをカチカチならすことで警告を発しますが、それでも立ち去らない場合に足で攻撃してきます。
“頭を後方から蹴る”、“髪をつかむ”というケースが多く、ツメなどでけがする場合も発生しています。
この場合の対応は“気を付ける”“巣がありそうな所に近づかない”といって程度しかできません。
詳しくはこちらの記事にまとめています。《重要!繁殖期のカラスへの注意点》

【ゴミステーションの食べ荒らし】
カラス被害の代名詞的なケースですが、最近では防護ネットや囲いの設置などでだいぶ数は減ってきました。
まだ繁華街などで歩道に簡易的に設置されたゴミステーションでは、防護ネットを被せるだけで、カラスが苦も無く荒らしていく様子が見られます。
防護ネットはカラスが持ち上げたり、ずらしたりできないように大きさや重りをつけるなどの対応が必要です。

【ねぐら前行動の鳴き声騒音と糞害】
秋から冬にかけてカラスたちは大きな集団となってねぐらを共にします。
その数は数十羽から時に1万羽もの規模になるのですが、その多くは数百羽から数千羽のグループが多く報告されています。
ねぐらに帰る前に近くの電線や建物の屋上に集まる習性『就塒前集合』をとるのですが、このときの鳴き声は想像を超える騒がしさ。さらに決まった場所に糞をすることになるので、糞害も膨大です。
対策としてはこの『就塒前集合』する場所を物理的に止まらせなくすることしかありません。
ただねぐら近辺の他の場所に移動する結果になることが多いです。
これも詳しくはこちらの記事で解説しています。《カラスの集団ねぐら。その時期や理由、対策を解説!》

【建物屋上などの、餌場や休憩場所での食べかすや糞害】
カラスは採ったエサを口のなかに入れたまま、お気に入りの場所で食事をする習性があります。
また羽やすめや遊び場としても、お気に入りの場所をそれぞれ用意しています。
多くはマンションやビルの屋上が多く、普段あまり人が出入りしないような建物が選ばれます。
屋上やその笠木部分は食べかすや糞が散乱することになり、衛生面でもよくありません。
食べかすなどが排水溝に詰まり、水が漏れるといった被害もあります。
この場合、笠木などに防鳥ワイヤーや剣山を設置することで被害は多少抑えられます。しかし屋上の平面部へ飛来し続けるケースもあり、完全に防ぐには防鳥ネットを併用するなどする必要があります。
他にはカラスの警戒心や頭の良さを利用して、普段見慣れていないものを置いて警戒心をあおったり、頻繁に屋上にいき追い払うことを続けることで、カラスに嫌いな場所と認識させることも手段のひとつです。

【耐火被覆や防水処理の破損】
カラスは好奇心が強く、遊びが好きな鳥です。なんでも突いてみたり、引っ張ってみたり、孔をあけてみたりと、採食目的でない行動をすることがあります。
その行動の被害で多いのが、倉庫や立体駐車場に侵入して鉄骨の耐火被覆を突っついたり、屋上の防水処理のコーキングを同様に破損させたりするのです。触感が心地よいのか、その理由は不明ですが、場合によっては深刻な事故に繋がる恐れもある、非常にやっかいな被害といえます。
対策は飛来や止まるのを防止するための防鳥ネットや防鳥剣山、防鳥ワイヤーの設置など、状況にあった対策を選択する必要があります。

【高所での営巣防止】
一般的カラスは人気のない林などの高い樹木を選んで巣を作りますが、市街地に近いところや、より高い建造物などに巣作りするケースが増えています。
最近ではビルのサイン看板や鉄塔上部などに巣を作るケースが多く報告されています。
巣につかっているハンガーが落下してきたり、巣そのものの落下が危ないケース、メンテナンスなどに支障が出るなど、巣がどのような害をもたらすのかは、営巣場所によって変わります。
この対策もケースバイケースになるので、まずは専門業者に相談されることがよいでしょう。

 

 

◎カモメ(ウミネコ)の鳥害対策

鳥害対策防鳥対策カモメウミネコ

私たちが『カモメ』と呼ぶ鳥にもたくさんの種類がいて、日本で通常みられるカモメの仲間は約8種類。
身体の大きなオオセグロカモメや、可愛らしいユリカモメなど様々ですが、一年を通して日本に留まり、全国に分布し個体数も多いのがウミネコです。

◎ウミネコの形態・繁殖・寿命

・対象:ウミネコ〈海猫〉
・属性:チドリ目カモメ科カモメ属
・体長:約46cm
・体重:約500~600g
・鳴き声:ミャーミャー
・繁殖期:4月~7月。年1回の繁殖で合計2~3個の卵を産み雌雄が交代しながら抱卵。
約25日で孵化。その後約45日で巣立つ。
・寿命:約12年。

◎ウミネコの性格と習性

ウミネコはその名の通り、鳴き声が猫に似ているから。
集団で行動する性質があり、繁殖時もたくさんのウミネコが一ヶ所に集まって営巣をします。
採食行動も集団で行い、大きな魚に追われて海面近くに上がってきたイワシなどの小魚を上空から狙います。
その際にできるウミネコなどの群れを『鳥山(とりやま)』と言い、漁師さんや釣り人に『小魚を狙う大きな魚』がいる場所を知らせてくれる益鳥でもあります。
一方で、人への警戒心も弱く、集団で行動し、雑食性で身体も大きいことから、主に沿岸部の漁港や市場、工場施設などで被害が多発しています。

◎主な被害と鳥害対策

【漁港や市場の糞害や汚し】
漁をしている船のまわりをたくさんのウミネコたちが飛んでいる様子を見ることがありますが、ウミネコはどこに、誰が、どの時間になったら美味しい魚が手に入るかを知っています。
当然のように、多くの漁港や併設された市場では水揚げから出荷までの時間になるとたくさんのウミネコが集まってきます。
捨てた魚ならまだしも、商品となる魚に手をつけることも。
またウミネコの水気の多い糞が商品や箱などの上に落下したり、周囲の建物自体が糞で汚されたり、食べ残しが散乱したりと、漁業関係者の悩みは深刻です。
対策としては、ウミネコがいったん止まって様子を見る場所、例えば庇の端や、建物の笠木などに防鳥ワイヤーや防鳥剣山などを設置することになります。
この際、ウミネコはハトなどと違って足の長い鳥のため、ワイヤーの高さや、剣山の長さなどを留意することが重要です。

【緑化された建物の屋上の営巣・糞・騒音】
通常、ヘビなどの天敵が近づきにくい断崖や岩場、島などに集団で巣を作ります。
国内では青森県の蕪島(かぶしま)が一大繁殖地として有名で、国の天然記念物に指定されています。
繁殖期になると約4万羽ものウミネコがこの島を埋め尽くし、観光地にもなっています。
通常はこのような自然のなかに営巣するのですが、最近増えてきているのが海に近い都市部のマンションやビルの屋上に巣をつくるケース。
多くは屋上緑化がされている建物で、数十羽のウミネコが集団で飛来します。
その建物は然り、周囲の建物にも糞害や騒音が及ぶことが多い近年増加中の鳥害です。
対策としては緑化部分の上に数十cm離して防鳥ネットを張り、さらにウミネコが止まる笠木などを防鳥ワイヤーや剣山で忌避することが基本となります。
漁港での対策同様、ウミネコの足の長さを意識した製品選定が必要です。

【沿岸施設の糞害】
倉庫や工場などが立ち並ぶ沿岸部の施設でウミネコの糞害で悩まされているケースはとても多いです。
住民が少ない地域なので騒音はあまり問題視されませんが、不衛生な環境と、清掃作業が大変という被害が出ています。
対策としては漁港などと同様に止まる箇所を防鳥ワイヤーや防鳥剣山などで忌避することになります。

 

 

◎ムクドリの鳥害対策

鳥害対策防鳥対策ムクドリ

本来は田畑で虫を食べてくれる益鳥でもあるのに、有名な集団ねぐら行動で害鳥として有名になってしまったムクドリ。
駅前の街路樹などで騒音と糞害を起こすのは繁殖が終わった夏から秋に掛けて。
姫路駅のムクドリ対策が全国的に有名で、同時に対策が非常に難しい鳥害対策の対象鳥でもあります。

◎ムクドリの形態・繁殖・寿命

・対象:ムクドリ〈椋鳥〉
・属性:スズメ目ムクドリ科ムクドリ属
・体長:約24cm
・体重:約75~90g
・鳴き声:ギャーギャー・ギュルギュル・ミチミチ
・繁殖期:3月~7月。年2回繁殖を行うケースもあり、1回に合計4~7個の卵を産む。雌雄が交代しながら抱卵し約12日で孵化。その後23日で巣立つ。
・寿命:自然環境下では5~7年ほどと推測されている。飼育環境では10年以上と言われている。

◎ムクドリの性格と習性

日本全国に生息していて、大きな公園や林、農耕地、果樹園、ゴルフ場など緑が多いところが生活圏となります。
普段から数羽から数十羽の集団で行動することが多く、日が暮れるころになるとケヤキなどの大きな樹木に集まってしばらくギャーギャーと鳴いています。
食性は虫から果樹など幅広い雑食性ですが、ハトやカラスのように人間の生活ゴミを食べることはあまり見かけません。
警戒心が強い反面、天敵から身を守るために人が多いところをねぐらとする傾向があります。
そのため駅前の街路樹などがねぐらとして選ばれるのです。

◎主な被害と鳥害対策

【街路樹に集まるムクドリの騒音と糞害】
ムクドリもねぐらの街路樹に降りてくる前に、カラス同様『就塒前集合』として近くの電線や建物に一旦止まって仲間が集まるのを待ちます。
やがて仲間が集まってくると一斉に飛び立ち、空を大きく旋回しながら飛び、やがて街路樹をめがけて降りてきます。
その数は数百羽から数千羽が主流ですが、1万羽以上の集団を観察したケースもあります。
ねぐらに着くと大合唱をはじめ、夜も遅くになるとピタッと鳴くのを止めます。
たくさんの糞が落下するため、人の往来が多い所だけにその被害は深刻です。

その対策法ですが、音や光、目玉などの脅し効果のものは、一定期間が過ぎると直ぐに慣れてしまう傾向があります。
ムクドリは枝の先に止まるため、枝先を剪定する方法も実際にとられてきましたが、街路樹本来の価値をうしないます。
小枝に止まらせないため、枝が突き出ないような細かな目合いのネットを被せる方法は一定の効果がありますが、景観の損失と、対台風などの安全対策も考慮しなければなりません。

数年前から姫路駅周辺では特殊波動方式のパルス発生装置を使った実証が試され、一定の効果を得ているといいます。
しかし追い払ったムクドリが、また別の街路樹に移動したり、駅の反対側にいったりといたちごっこになっているそう。
対策したムクドリがどこか森林や河川敷きの樹木などに移動してくれればうれしいのですが、なかなかそうはいかないようです。
鳥害対策会社として、これといったムクドリ対策法を示せないことを、非常に心苦しく思っています。

 

◎スズメの鳥害対策

日本に生息するスズメは『スズメ』と『ニュウナイスズメ』の2種。
この聞きなれない『ニュウナイスズメ』は主に山や森に住むため、普段の生活ではあまり見かける機会はありません。
ここではスズメについてご説明して参ります。

◎スズメの形態・繁殖・寿命

・対象:スズメ〈雀〉
・属性:スズメ目スズメ科スズメ属
・体長:約15cm
・体重:約18~27g
・鳴き声:チュンチュン
・繁殖期:3月~8月。年2回繁殖を行うと考えられており、1回に合計4~8個の卵を産む。雌雄が交代しながら抱卵し10~12日で孵化。その後14~18日で巣立つ。
・寿命:自然環境下での寿命は調査が進んでなく明確ではないが、天敵も多いこともあり半年から1.4年ほどと推測されている。飼育環境では15年という記録がある。

◎スズメの性格と習性

日本人にとって最も馴染み深い鳥ともいえるスズメ。
みんなが知っているおとぎ話『舌きり雀』や、稲作文化の日本の原風景には欠かせない存在であったりと、その可愛らしい容姿と鳴き声と共に長く愛されています。
一方でカラスや猛禽類、猫、ヘビなど天敵も多いことからその性格は非常に臆病。
警戒心も強い反面、天敵が人を避けること知っているからか、人の近くで生活します。
これはツバメが民家の軒下に巣を作るのも、同様の理由と考えられています。
また光るものやヘビのように長い形状のものを怖がるとも言われています。

集団で行動することが多く、営巣も集団で行います。
そのため営巣に選ばれた場所では、数十羽の鳴き声となり、騒音に悩まされることが多いようです。

◎主な被害と鳥害対策

【屋根や垂木のすき間に巣をつくる】
スズメの鳥害で多いのが一軒家や寺社に集団で営巣し発生します。
鳴き声による騒音と、糞や巣のワラなどが雨どいなどにつまり水漏れなどを起こす原因になったりします。
建築用語で瓦葺屋根の軒瓦を並べた際にできるすき間を『雀口(すずめぐち)』と呼ぶように、昔から人のそばに生活し、巣をつくってきました。
対策としては、しっかりと清掃した上で、入口をふさぎます。
ふさぐ方法は様々ですが、硬樹脂ネットでも20㎜以下の目合いのものを選びましょう。
またこのすき間はコウモリなども侵入しやすいため、それを考慮すると10㎜以下の目合いが求められます。

【穀物倉庫や市場などに採食しに来る】
お米や青果など扱っている倉庫や市場でもスズメの被害はとても多いです。
問題となっているのは、お米などを食べられることではなく、包装や外箱の上に糞をされて出荷できなくなるというケースです。
対策としては、まず防鳥ワイヤーや防鳥剣山はあまり効果がありません。というのも、スズメなどの小鳥はハト用の0.81㎜径のワイヤーでも難なく止まります。
剣山も小枝に止まるかのように、そのピンに止まってしまうからです。
そのため倉庫や市場でも商品を置いている上の箇所に15~20㎜の防鳥ネットを水平に張ることになります。
また警戒心も強く、キラキラするものを怖がる傾向もあるため、そのような防鳥グッズなども試してみる価値はあるかもしれません。

最後に捕捉となりますが、最近あまりスズメを見かけなくなったと言われています。
これは日本に限らず世界の多くの都市で進行しているようで、その原因として『エサとなる虫が少なくなった』、『巣をつくる場所が減った』、『環境汚染など公害の影響』などが考えられています。
日本では稲を食べることもありますが、同時にその害虫を食べてくれる益鳥でもあり、いわば日本の食を支えてくれている存在でもあります。

 

◎ツバメの鳥害対策

鳥害対策防鳥対策ツバメ

ツバメが家に巣を作ると縁起がよいとされ、農作物を食べず虫だけを食べてくれる益鳥でもあります。
野球球団や企業のマスコットとして使われたり、エストニアやオーストリアでは国鳥指定されるなど世界的にも人気の鳥。
日本には5種類のツバメの仲間が生息していますが、ここでは日本全国に分布し個体数も多い『ツバメ』について説明して参ります。

◎ツバメの形態・繁殖・寿命

・対象:ツバメ〈燕〉
・属性:スズメ目ツバメ科ツバメ属
・体長:約17cm
・体重:約12~20g
・鳴き声:〈チィチュロリ、チュリチュリ、ジュリリ〉 警戒時〈ツピー、ツピー〉
・繁殖期:3月~7月。年2~3回繁殖を行い、1回に約3~7個の卵を産む。主に雌が抱卵し約14日で孵化。その後21日で巣立つ。
・寿命:天敵が多いため、自然環境下では平均で約1.5~2年ほど。

◎ツバメの性格と習性

ヘビやネコなどの天敵から巣を守るため、民家の軒下などに営巣することを好みます。
他では橋や倉庫の庇などに営巣するケースもありますが、やはりある程度の人の往来があるところを好むようで、その意味では人への警戒心は強くないと言えます。

食性は虫のみで、穀物や果物などは食べないので、農家にとって益鳥として重宝されています。
遠く東南アジアから数千キロも旅をし、時速100km超で飛行可能な屈強な身体は、この動物性のエサにあると言われています。

最近では巣を作りやすい形状の家屋が減少したことで、商業施設など従来とは別の場所に巣を作るケースが増えました。そのようなケースで鳴き声や糞などに困っているとの相談が寄せられます。

◎主な被害と鳥害対策

【入口等の人の往来がある場所への営巣】
多くのケースではツバメの営巣に対しておおらかに見守っている場合がほとんどですが、お客さんに糞が掛かるなどのケースでは対応せざるをえません。
対策法ですが、まず巣をつくる場所に剣山などをつけてもその上に巣作りするので、ほとんど意味がありません。目玉などの脅し類も効果はないでしょう。
防鳥ネットも一部ではなく全体をカバーするように張らないと、その境界部分を巣作りの格好の土台として巣を作ってしまいます。
安価で効果的と思われるのが、巣をつくる場所に養生テープなどを張ることです。
表面がツルツルしている場所にはツバメも巣をつくれません。
巣に卵やヒナがいないときにキレイに撤去してから張るようにしてください。
この方法は当社が仕事として請け負ったことがないため、自ら実証したことはありませんが、恐らく効果的かと思われます。

みんなの人気者のツバメも、実は個体数が減少傾向にあります。
1972年から継続されている石川県の『ふるさとのツバメ総調査』では、1974年の36,751羽をピークに2019年には9,295羽とおよそ1/4も減少しているとの結果も出ています。
県によっては減少種、要保護生物等の指定をしている自治体もあり、今後の動向が注目されます。

それぞれの鳥の生態や習性が、被害発生の要因と深く関係することが
お分かりいただけたのではないでしょうか。
鳥害対策の現場では、技術は当然のことながら
鳥のことを理解しているかどうかが重要となります。

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