世界に生息するカラス約130種類の内、日本には7種のカラスがいます。
有名なハシブトガラスとハシボソガラスの他、コクマルガラス/ミヤマガラス
ワタリガラス/ホシガラス/カチガラス(カササギ)の特徴や鳴き声をまとめました。
番外編としてあの神話のカラスもご紹介します。
目次
日本にいるカラスは全7種類
普段カラスといえば、真っ黒い体と大きなクチバシの「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」が有名ですね。
どちらも分類学上はスズメ目カラス科カラス属。
このカラス属では他にも「コクマルガラス」「ミヤマガラス」「ワタリガラス」といった仲間がいます。
他にもホシガラス属「ホシガラス」とカササギ属「カチガラス(カササギ)」を加えた計7種のカラスが日本に生息しているカラスの種類となります。
ちなみに、どのカラスも名称は全て「~ガラス」と濁点をつけるのが正式名称。
それでは種類ごとに生態や特徴をご紹介してまいります!
《ハシブトガラス》
ハシブトガラスについて
カラス目カラス科カラス属。漢字表記は〈嘴太烏〉。
ハシブトガラスは日本で最もよく見掛けるカラスで、都会のビルを樹林に見立てて巧みに生きています。
もともとは森林に住んでいたのが、徐々に都市部へと生息域を変えその個体数を伸ばしてきました。(ハシボソカラスは減少傾向)
採食は塊物をくわえて樹上やビルの屋上など安心できる場所で食べます。
営巣地は高い樹林を好みますが、最近では街路樹や電柱など低所にも営巣するようになっています。
ハシブトガラスの特徴
・生息地:小笠原諸島をのぞく日本全国の市街地や山地
・全長:約56cm
・翼開長:約100cm
・体重:約500~900g
・性格:好奇心が強い、環境によって攻撃的
・鳴き声:顔を突き出し「カァーカァー」
・見分け方:くちばしが太く、上部がアーチ状/頭部が逆毛で立っている/あまり歩かず、ピョンピョン跳ねるように移動する
・羽毛:羽の内部も黒っぽく瑠璃色
《ハシボソガラス》
ハシボソガラスについて
カラス目カラス科カラス属。漢字表記は〈嘴細烏〉。
ハシブトガラスよりも体がひと回り小さく、畑や河川敷などで採食します。
知性の高いカラス属のなかでも、学習能力が極めて高いことでしられ、車にクルミを割らせて中身を食べる有名なカラスもこのハシボソカラス。
意外にも皮膚に近い羽毛は白く柔らかな短い羽毛で、寒さにも非常に強い。
食性は雑食で、植物の種子、昆虫、果実のほか農作物なども食べるため、
農村部で農業害鳥として扱われることもあります。
ハシボソガラスの特徴
・生息地:田畑や農耕地
・全長:約50cm
・翼開長:約100cm
・体重:約400~700 g
・性格:慎重
・鳴き声:「ガーッガーッ」
・見分け方:くちばしが細い/足を交互に出して歩く
・羽毛:羽の内部が白く背中に鱗模様
《コクマルガラス》
コクマルガラスについて
カラス目カラス科カラス属。漢字表記は〈黒丸烏〉。
世界のカラス属の中で最も小さく、成鳥でも鳩ほどの大きさしかありません。
ツートンカラーの愛らしい見た目に、強面のハシブトガラスの仲間とは思えないほど。
鳴き声も「キュウキュウ」と可愛らしい声で鳴きます。
冬季に九州地方に飛来するのみですので、なかなかお目にかかれないレアなカラスです。
頚部から腹部の羽毛が白い淡色型が主ですが、全身の羽毛が黒い黒色型もいます。
コクマルガラスの特徴
・生息地:九州地方(冬季のみ)
・全長:約30〜33cm
・体重:約180〜250g
・性格:慎重
・鳴き声:「キュウキュウ」
・見分け方:くちばしがとても小さい。
・羽毛:淡色型も黒色型も共通して側頭部に灰色の羽毛が混じる。
《ミヤマガラス》
ミヤマガラスについて
カラス目カラス科カラス属。漢字表記は〈深山烏〉。
越冬の為にシベリアなどの大陸から群れをつくって飛来します。
以前は九州や本州西部に限定的に来ていましたが、現在はほぼ全国に飛来する。
別の種類のカラスとも群れを作ることでも知られており
性格もおおらかなようで、河川敷などで他のカラスと行動を共にしていることも多くみかけます。
雑食で昆虫類、鳥類の卵や雛、果実、種子等を好んで食べます。
ニュージーランドでは害虫駆除のためにイギリスから持ち込まれ帰化したそうです。
ミヤマガラスの特徴
・生息地:森林や農耕地
・全長:約44〜47cm
・翼開長:約90cm
・体重:約280〜350g
・性格:おおらか
・鳴き声:「ガァーガァー」
・見分け方:群れで飛行・成長になるとくちばしの皮膚が剥き出しになり白く見える
《ワタリガラス》
ワタリガラスについて
カラス目カラス科カラス属。漢字表記は〈渡烏〉。
ユーラシア大陸全域や北米大陸など広範囲に生息し、北海道の一部に冬に渡ってきます。
カラス属の中で最大級の大きさで、ハシブトガラスよりも一回り大きな体のカラスです。
冬の渡り鳥として越冬の為に流氷が来るころ知床などのオホーツク海沿岸にに飛来します。
知能も高いカラスとして位置付けられており、人間の4歳児に相当する頭脳を持っているとも言われています。
ワタリガラスの特徴
・生息地:北海道(冬季のみ)
・全長:約60〜65cm
・翼開長:約100~150cm
・体重:約1000〜1300g
・性格:好奇心が強い
・鳴き声:「カポポッカポポッ」
・見分け方:ハシブトガラスに似ている
《ホシガラス》
ホシガラスについて
カラス目カラス科ホシガラス属。漢字表記は〈星烏〉。
日本では北海道・本州・四国の亜高山帯・針葉樹林に生息し、警戒心も強いためその姿をみるの非常にまれ。
昔から登山者にはよく知られており「岳鴉(ダケガラス)」の名で呼ばれていました。
翼には茶色に白の斑点があり、野鳥愛好家や写真家にも人気の可愛いカラスです。
雑食で昆虫類、鳥類の卵や雛、種子等などを食べますが、
国内では高山帯に群生するハイマツの種子が重要な食糧源になっています。
この松の実を貯蔵する行為が有名で、前年の秋に貯めておいた松の実を
餌の少ない時期の子育てにつかう行動が確認されています。
ホシガラスの特徴
・生息地:針葉樹の豊富な山岳地帯
・全長:約35cm
・体重:約250〜300g
・性格:慎重
・鳴き声:「ガーッガーッ」
・見分け方:茶色い地色に白い斑点模様
《カチガラス》(別名:コウライガラス・正式名称:カササギ)
カチガラスについて
カラス目カラス科カササギ属。カササギの漢字表記は〈鵲〉。
日本では九州を中心に、北海道や新潟、長野などでも繁殖が確認され、局地的に分布しています。
白黒のカラーリングと、光沢のある碧色に輝く羽、長い尾羽が特徴の美しいカラスですが、
その美しい見た目とは裏腹に気性は荒いことが知られています。
鳩ほどの体の大きさにも関わらず、トンビなどの大きな鳥にも威嚇を仕掛けることもあるそう。
佐賀県では県鳥に指定され、地元Jリーグのクラブ〈サガン鳥栖〉のマスコットにもなっている。
佐賀県と福岡県の一部の〈カササギ生息地域〉が天然記念物に指定されています。
もともとは日本には生息しておらず、その渡ってきた起源については諸説あります。
“豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に「カチカチ(勝ち勝ち)」と鳴くことから
縁起が良い鳥として持ち帰られたものが野生化した”、という説や
“ミヤマガラスの群れに交じって冬の朝鮮半島から渡り、それが局地的に定着した”など。
カチガラスの特徴
・生息地:九州地方
・全長:約45cm
・体重:約300〜350g
・性格:気性が荒い
・鳴き声:「カシャカシャ」
・見分け方:白黒のカラー、長い尾羽
以上が日本にいるカラス7種類のご紹介でしたが、
最後にもう1種、日本にはとても縁の深いありがたいカラス様がいるので、番外編としてそちらもご紹介したいと思います。
番外編《ヤタガラス》
ヤタガラスと日本神話
漢字表記は〈八咫烏〉。
古事記や日本書紀などに数多く登場する日本神話上のカラス様。
特徴的な3本の足は天・地・人を表していると言われています。
八咫とは大きいという意味ですが、どれほど大きかったのかは不明。
神武天皇の東征のとき、熊野から大和の橿原に入る危険な路の先導役をしたことから“導きの神”として崇められています。
日本サッカー協会のシンボルとしても有名で、これには“ゴールへボールを導いてほしい”との願いが込められているとのこと。
八咫烏と縁の深い和歌山県の熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社、三社の総称)では太陽神の遣いとして信仰され、いまも日本サッカー協会の関係者や日本代表選手が必勝祈願で参拝されています。
より詳しい解説はこちらにて wikipedia八咫烏
世界の神話に登場するカラス
最後になりますが、カラスが神話に登場する例は世界各地にも残されています。
例えば中国などの東アジアには「三足烏(さんそくう)」と呼ばれる、太陽に棲むとされる伝説のカラスが登場し、エジプト神話の壁画にも三本足の鳥が描かれています。
またギリシャ神話では太陽神アポロンにカラスが仕えていたり、アイヌ神話ではカラスが太陽を救うとされるなど…。
神話に登場するカラスは他にもあるようでしたので、また機会があればカラスと世界の神話について調べてみたいと思います。
日本にも意外とたくさんの種類のカラスがいるのですね。
なかにはカラスとは思えない鮮やかな種類も!
普段はあまり良いイメージの少ないカラスですが
この記事をきっかけに興味を広げてもらえれば嬉しいです。