2014年2月、川崎市内の社会福祉施設で
職員や通所者など計12人がオウム病に集団感染しました。
鳥や動物などを飼っていない施設内で、なぜオウム病が発生したのか!
その犯人は?どこから感染したのか?
調べていくと意外な感染経路が判明しました。
換気口の乾燥したフンが館内に!
これまで日本では動物園や鳥類の飼育施設などでオウム病の発生が報告されていましたが、それらと関連のない施設での集団発生は初めての事例だそうです。
当初は、インフルエンザではないかと投薬治療が行われましたが、病状がさらに悪化したことから肺炎と診断。
その時点で報告を受けた川崎保険所は、血液検査を実施したところ、患者の多くからクラミジア菌が検出されオウム病と確定しました。
動物との接触が一切無い同施設で、その感染源と感染経路の特定作業が賢明に行われます。
調査員がくまなく調べていくと施設2階の外壁から採取したハトの糞から、同じクラミジアが見つかります。さらにこの外壁の換気口からハトが出入りしていたことが判明。
その換気口内で乾燥したフンが施設屋内に飛散して感染が広がったとのことです。
川崎市健康安全研究所では、「日常生活で感染することはほとんどないが、家の窓や軒下に鳥のフンがたまらないように注意し、掃除する際にはマスクを着け、手洗いを徹底してほしい」と警告しています。
オウム病とは
◎原因
オウム病は、オウム病クラミジアにより引き起こされる感染症です。
オウム病クラミジアは、野生やペットの鳥の体内に生息し糞とともに排泄されます。糞が乾燥するとオウム病クラミジアが空気中に漂い、人はこれを吸い込むことから感染します。また、餌を口移しすることでも感染します。
◎症状
オウム病クラミジアが体内に侵入すると、1〜2週間ほどの潜伏期間の後に症状が現れます。症状はインフルエンザに類似しており、突然の発熱と頭痛、筋肉痛、関節痛が発症します。また、激しい咳をともなうこともあります。
重症化した場合には呼吸窮迫症候群や、髄膜炎などを生じ意識障害や全身の臓器障害を合併して、生命の危機に瀕することもあります。
◎検査・診断
オウム病は、血液や痰などを用いて病原体であるオウム病クラミジアを特定することで診断されます。ただ、この病原体を検出するには細胞培養と呼ばれる特殊な検査が必要ですので、一般的な病院では行うことができません。
◎治療
オウム病の治療では、抗生物質が第一選択になります。
重症化すると呼吸窮迫症候群や多臓器不全をきたすこともあり、このような場合には、人工呼吸器や透析などを用いた治療が必要となります。
自在に空を飛び、小さな隙間でも入り込む鳩たちは
私たちの想像を超える活動範囲をもっています。
オウム病をはじめ様々な原因菌を持つ鳩の対策には、
充分な警戒が必要といえる事例でした。