昔からツバメが家に巣を作ると縁起がよいとされ、
人家に営巣することが多い鳥として知られていますが、
人の生活や住宅環境の変化によってツバメの数が減り、
40年前の半分以下に減少しているという調査もあるようです。
今回はそんな渡り鳥ツバメの生態とその巣作りについてまとめました。
ツバメの生態と特徴
ツバメは、北半球に広く生息し、春から夏にかけて日本へやって来る渡り鳥。
町の中や周辺の農耕地、河川敷などにすみ、日本の民家や商店の軒先など、人間が造った建造物に巣を作り、子育てをします。
昔から害虫を食べて農作物を守ってくれる益鳥として、また人通りの多い家の軒先に巣を作るので、お客の出入りが多い家=繁栄している家=「商売繁盛」の象徴として、昔から大切にされてきました。
小回りの利く翼を持ち、空を飛ぶ虫を飛びながら捕食し、水面上を飛行しながら水を飲むことができます。
しかし脚は短く歩くのが苦手で、巣の材料の泥を求めるときを除いて地面に降りることはほとんどありません。
肉食で主に昆虫を食べますが、その小さな体からは想像できないほど実は大食漢。
1日に数百匹もの虫を食べます。
子育て中のヒナに与える虫も結構な数であり、ツバメが害虫駆除の益鳥として重宝される理由が分かります。
ツバメの種類
日本にやってくるツバメの仲間には、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、リュウキュウツバメ、ショウドウツバメの5種類です。
今回は日本で一番多く見られる「ツバメ」の生態を中心にご紹介します。
ツバメの一年
暖かい東南アジアで越冬したツバメは、春になると数千kmの旅をして北海道から九州の種子島ぐらいまでの地域にやってきます。
ツバメは3~7月にかけて子育てをします。
オスとメスは共同で巣作りを行い、泥と枯れ草に唾液を混ぜてお椀型の巣を作ります。
そしてメスは卵を産んで温めます。卵の数は平均5個です。約2週間抱卵してヒナがかえると、親鳥は休みなくエサの昆虫を運んできます。やがて成長したヒナは飛べるようになり、約3週間でヒナは巣立ちます。
その後、親鳥は2回目の繁殖に入ります。夏の間このサイクルを2~3回繰り返し、ツバメ達は繁殖活動を行います。
夏の終わり、ヒナが親元を離れて巣立ち、日本から去るまでの間、ツバメたちはエサをたくさん食べて、渡りのための準備をします。
その時期に、夜は近隣の河川敷のヨシ原やススキなど、背の高い植物で集団ねぐらを作って休むようになります。
そして秋が深まると、親鳥もその年に生まれた若鳥も、越冬のためにエサを求めて台湾、東南アジアなどへ渡っていきます。
ツバメの寿命
ツバメは平均して2年程度しか生きることが出来ないと言われています。
これはツバメには天敵が多く、厳しい生存競争にさらされており、多くの個体が若くして命を落としてしまうためです。
子育て中にも巣をカラスやヘビに襲われ命を落としてしまうヒナが多くいます。
多くの危険を伴う渡りも、天敵に襲われるなど、ツバメたちにとって命がけの旅です。
ツバメを見かけたら、寿命の短い渡り鳥だと優しく見守ってあげたいものです。
ツバメの巣作り
ツバメの最大の天敵はカラスやネコ、そしてヘビ。
卵や雛を食べられないよう、人通りの多く人目のつきやすい民家や商店の軒先などに巣を作ることが多いです。
あえて人間が多い場所に営巣するのが他の鳥と大きな違いです。
人間の信用してくれているのですね。
巣は通常は新しく作りますが、巣作りの手間を省くために、使っていない古巣があれば、翌年に修復して再使用することもあります。
もし家にツバメの巣がありましたら、できれば巣立った後も巣は壊さず、枯れ草や羽を取り除き、そのままにしておきましょう。
ツバメの巣による被害と対策
ツバメは民家の軒下等、人目のつきやすい場所に巣を作ります。
洗濯物を干すベランダや、頻繁に通る玄関先に巣を作られると、巣から落ちてくる糞や泥によって寄生虫や病原菌がわく、などの問題もあります。
巣の下に古新聞など糞を受けるものを置いて、時々取り替えたり掃除をすることで清潔にしておくことができます。
他にも、段ボールやビニール傘などで作った糞除けを取り付けるさまざまな糞対策がありますので、参考としてリンクを貼っておきます。
参考サイト:
『Hatena Blog 都会より田舎が好き。 ツバメの糞よけ対策、方法をまとめてみた』
『第5回緑の国勢調査’97身近な生きもの調査 ツバメの巣作りは歓迎されているの?』
糞が落ちるのは、子育て期間中の2週間程度のことですので、上手に工夫してツバメと付き合えるといいですね。
ツバメの巣の撤去について
ツバメは毎年、同じ巣もしくはその近くに戻ってきます。
もし自宅の敷地内にツバメが営巣した場合、できればそのままにしておいてあげるのが一番よいのですが、糞などで人や車に被害をきたしてしまい、撤去しなければならない場合もあります。
家にツバメが巣を作ってしまい、すでに巣にヒナや卵がいる場合、無断で撤去することは「鳥獣保護法」により禁止されています。
卵を産んでからヒナが巣立つまでの期間(約1か月)を見守り、巣立ちを終えた後に巣を撤去しましょう。
巣の中にヒナや卵がいない状態であれば、許可なく巣を撤去することが可能です。
自分で撤去できない場合は、専門業者にご相談ください。
公園や街路樹、電柱等の巣の除去については、それぞれの施設管理者にご相談するのがよいでしょう。
同じ場所に再び巣を作られないようにするには、巣を撤去した後の対策が重要です。
侵入口やすき間をふさぐ、防鳥ネットを張る、木の枝を剪定するなどの対処を忘れずに行いましょう。
いかがでしたか。今回は古くから私たちの生活と密接に関わりあってきたツバメについてお届けしました。
日本で見られるツバメの種類についてさらに詳しくは
『日本のツバメの種類、6種全ての特徴をご紹介!』
もぜひご覧ください。
人間と長い間の信頼関係にあり、人と一緒に生活してきたツバメ。
不衛生を理由に巣が落とされるケースも増えており、
ツバメと人のつながりが消えつつあります。
私たちが考え工夫することで、
ツバメの子育てを見守る社会であり続けたいものです。